ネーターの定理
今回のテーマは「ネーターの定理」です。運動方程式を積分してエネルギーや運動量などの保存則が得られることはよく知られています。どのような保存量と保存則が存在するかは、主にその力学系を規定する運動方程式の性質、特にその不変性と関連しています。しかし、その力学系についてラグランジュ関数が存在するときには、系の力学的性質はによって決まるので、保存則はの不定性と深く関わっています。したがって、運動方程式を解かずともの不変性から保存則を見出すことができます。その事実を一般に示したのがネーターの定理です。
そこで、まず座標と時間を同時に動かした次の微小変換を考えます。
は変換の微小パラメータで、とします。「拡張された変分法」での、変分は積分の両端付近のみで時間を変化させ、中間領域ではの関数の形のみを変え、時間は動かしませんでした。ネーターの定理は、すべての時間でとを上式のように変化させて良いので、あらためて、(1) の変分に対してを計算していきます。
作用積分の変分をの1次、つまりの1次まで求めます。上記の変換によっては
に変わるので、
となります。(1) より得られる
を上式に代入して次式を得ます:
次に、この式の中のをおよびで展開するのですが、(1) のはの異なる時刻における量の差であるからです。
そこで、を固定した変分を
によって定義します。すると、
が成り立つので、
を得ます。最後の表式では2次の微小量は無視してをとしました。
また、(4), (7), (8)を用いて
を得ます。上式の最後で2次の微小量を無視しました。これより結局、
となります。(8), (9)を使ってを展開すると、
となります。
こうして、(5), (10)から
が得られます。この結果は、任意の微小変分(1)に対して成り立つ恒等式です。
ネーターの第1定理
もしが任意の積分領域において、(1)のもとで不変ならば、
です。したがって、ラグランジュの運動方程式のもとでは、(11)の右辺の第1項は消えるので、次の保存則が成り立ちます。
こうして保存量が得られました。
このように連続変換によって作用積分が不変ならば、その変換に対応した保存量が存在します。それをネーターの第1定理といいます。