両端を固定しない変分法
今回のテーマは「拡張された変分法」についてです。前々回のハミルトンの原理では、運動方程式を導く際に、両端を固定した変分を行いましたが、両端を固定せずに動かす変分を考えることにします。そうすることで、ラグランジュ方程式以外の力学的情報が作用積分から得られます。
作用積分の端点の時刻を動かし、さらにでの変分も0としない一般的な変分を考えます。両端の近くでのの変分はの関数形自体の変分との変分からの寄与の和となります;
ただし、の近傍以外の中間領域ではの変分はのみとします。
この変分に対しての変化は
となります。これを変形すると、
ここで、
同様にして、
これらを用いて2次以上 の微小量を無視すると、
を得ます。
は時間を止めた変分なので、
が成り立ちます。よって、部分積分ができるので、( 3 ) は
となります。これが拡張された変分の一般式です。
上の式の第2項はラグランジュ方程式を用いると消えるので、運動の経路の上では、
が成り立ちます。
( 6 ) は運動経路上での作用積分の変分は、積分の中間領域には依存せず、境界値のみで決まるということを示しています。つまり、は積分可能であることを意味しています。したがって、作用積分の汎関数変分が積分可能であるための必要十分条件は、その積分経路上でラグランジュ方程式が成り立つことです。
そこで、
とおくと、
と書けます。
ハミルトンの正準理論は今後詳しく説明しますが、よくご存知のように、正準形式では一般化運動量は( 6 ) のの係数で、
によって与えられます。このはに共役な運動量と呼ばれます。
また、ハミルトン関数は( 7 ) のの係数因子
で定義されます。は正準変数の関数として定義されますが、そのをで表したものがの表式の中のの係数です。そこで、
と表すことにします。ただし、
で、はラグランジュ形式での量を意味します。それに対して、ハミルトンの正準形式では、
と表されます。これからはとを基本変分式と呼ぶことにします。