ホロノーム系と非ホロノーム系
今回のテーマは、「拘束条件」についてです。拘束条件は、力学変数をとすると、一般に微分形で与えられ、次のように表されます。
ここで、は拘束条件の番号を表す添え字で、は拘束条件の数です。とはと時間の関数で、はの略記です。
のうちで独立でないものは落として、はすべて独立とします。これらのうちで積分可能なものがあれば、その拘束条件を積分形で表す方が便利なので、積分可能なものは積分して、
と表すことにします。は積分定数で、は積分可能な拘束条件の数です。つまり、積分可能でない残りの拘束条件は、
となります。
すべての拘束条件(1)がすべて積分可能な場合、つまりのとき、この系をホロノーム系(horonomic system)といい、積分不可能な拘束条件のある場合を非ホロノーム系といいます。
例)曲面上の運動
曲面への法線成分をとすると、質点の運動は法線に垂直なので、拘束条件は
となります。その曲面の方程式を
とすると、
です。この (a-3) を (a-1) に代入すれば、直ちに積分できて (a-2) を得ることができます。これが積分形の拘束条件です。したがって、この系の自由度は 3-1=2 ということです。
非ホロノーム系の例として、滑らかな平面上を滑らずに転がる球の運動です。
剛体の運動を記述するのに便利なオイラー角を用いて拘束条件を表します。平面上の球の状態を指定するのに、中心の位置、球の向きを決めるオイラー角の5変数が必要で、半径aの球が滑らない条件は次の2つです。
この2つの条件を求めていきます。球が角速度で回転し、速度で並進しているとします。この球が滑らず平面上を運動するとき拘束条件は、
です。ここでは、球の中心から平面と球の接点へ向かうベクトルとします。
球の回転は、回転行列で表せます;球に固定された系と平面に固定された系の変換行列がということです。
いま、球に固定されたある点を考えます。この点は、で回転するので、です。また速度と角速度の関係は、なので、
よって、
この式に右からを掛けて、
を得ます。
上の結果を用いて(b-3) に (b-4) を代入して具体的に計算すると、
したがって、
として条件が求まりました。