ポアソン方程式と境界値問題

 今回のテーマは、「ポアソン方程式と境界値問題」についてです。前回、静電場における境界値問題を扱いましたが、そこでさらっと流していたポアソン方程式の解の一意性を解説していきます。


ポアソン方程式の境界値問題が一意的な解をもつとは、

ある閉じた領域Vの中で与えられた\rhoを含むポアソン方程式があって、境界条件として\phiの値か{\partial \phi}/{\partial n}の値がその領域Vの表面Sで与えられているとき({\partial}/{\partial n}Vを囲む閉曲面の法線微分を表す)、これら同じポアソン方程式境界条件に従う2つの関数\phi_1\phi_2は、恒等的に等しい。

ということです。


そこで、今回はこのことを証明していこうと思います。



まず、
\Phi = \phi_1 - \phi_2 \tag{1}
によって定義される\Phiを導入します。\Phi\Deltaを演算したものは、\phi_1\phi_2が満たすポアソン方程式が同じ\rhoを含むので0になります。すなわち、\PhiVの中で、ラプラス方程式\Delta\Phi = 0を満たすということです。したがって、Vの中で、
 \Phi\Delta\Phi = 0 \tag{2}
が恒等的に成り立ちます。また、\phi_1\phi_2に対する境界条件が同じなので、\Phiまたは、\frac{\partial \Phi}{\partial n}は、Sの上で恒等的に0になります。
 式(2)をVの内部で体積積分すると、

\begin{eqnarray}
\displaystyle \int_V \Phi\Delta\Phi dV = \displaystyle \int_V \mathrm{div}(\Phi\ \mathrm{grad}\ \Phi) dV - \displaystyle \int_V (\mathrm{grad}\ \Phi)^2 dV = 0 \nonumber \\
\displaystyle \int_V \mathrm{div}(\Phi\ \mathrm{grad}\ \Phi) dV = \displaystyle \int_V (\mathrm{grad}\ \Phi)^2 dV \hspace{20mm} \tag{3}
\end{eqnarray}
のようになります。
ここで、 \Phi\Delta\Phi = \mathrm{div}(\Phi\ \mathrm{grad}\ \Phi) - (\mathrm{grad}\ \Phi)^2 を用いました。


さらに、式(3)の左辺にガウスの定理を用いることで、

\displaystyle \int_S \Phi ( {\partial \Phi}/{\partial n} ) dS = \displaystyle \int_V (\mathrm{grad}\ \Phi)^2 dV \tag{4}
が導かれます。つまり、\Phiまたは\partial \Phi / \partial nのどちらかがSの上で恒等的に0であれば左辺は0となり、その結果、右辺の体積積分の値が0になることがわかります。ここで、 (\mathrm{grad}\ \Phi)^2 は負になることはないので、 \mathrm{grad}\ \Phi Vの内部で恒等的に0とならなくてはなりません。


 まず、境界上で、\Phiがいたるところで0だとします。もし、\PhiVの内部のある領域で0でない値をとったとすると、その領域と境界の間に\mathrm{grad}\ \Phiが0でない領域がなくてはなりません。これは\mathrm{grad}\ \PhiVの内部で恒等的に0になるということに矛盾するので、この境界条件の下では、\PhiVの内部でいたるところ0になります。

 また、もし境界上で、 {\partial \Phi}/{\partial n}がいたるところで0であることが要求されていたとすると、\Phiは境界上およびVの内部でいたるところで定数であるということになります。この場合、\phi_1\phi_2とは定数だけ異なっていても問題ありませんが、そのとき、\phi_1および\phi_2から導かれる電場は恒等的に等しいので、この定数差は無視してもよいということです。

したがって、どちらの境界条件が課せられても、\phi_1\phi_2は恒等的に等しいということになり、ポアソン方程式の解の一意性が証明されました。




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